東北地方太平洋沖地震被災者の皆様へ - 日本リウマチ学会からのお知らせ
日本リウマチ学会のホームページに記載されている、リウマチ性疾患や膠原病で投薬治療を受けている方々への服薬に関する留意事項の説明です。
http://www.ryumachi-jp.com/info/news110314.html
以下は上記ページからの引用です。
..... 関節リウマチを始めとするリウマチ性疾患あるいは膠原病で治療中の皆様にお知らせ致します。現在、プレドニン、メドロール、デカドロン、リンデロンなどのステロイド製剤を服用中の患者様は、お薬を中止すると、症状が悪くなる可能性があります。また、長期にステロイド製剤を服用している方が突然お薬を中止すると、身体がだるくなったり、熱がでたり、ひどくなると血圧が下がったりします。このため、ステロイドの中止はしないようにお願いを致します。また、ステロイドは一般の薬局で購買をすることはできず、医師の処方箋が必要なお薬ですので、手元にお薬がない方は、最寄りの災害拠点病院などで処方を受けてください。
消炎鎮痛薬は、使用するのを中止すると症状が悪くなることはありますが、それほどひどくはなりません。
抗リウマチ薬(リマチル、アザルフィジン、メトトレキサート、プログラフなど)は、たとえ服用をやめてもすぐに症状が悪くなることはありません。一般には2週間以内に服用を再開すれば、症状が余りひどくなることはありません。
生物学的製剤は、アクテムラ、オレンシアなどの場合には、点滴の効果は一般には4週間持続します。レミケードの効果は6〜8週間持続します。皮下注射のエンブレルの場合は3〜7日、ヒュミラは2週間と短めですが、たとえ投与が中断しても急激に症状が悪くなることはありません。.....
上記引用中にある「災害拠点病院」の一覧は、以下のページで確認できます。
災害拠点病院の一覧(WikiPedia) : http://bit.ly/fePteS
また、以下は JMM [Japan Mail Media] No.629 Extra-Edition で配信された東京都立墨東病院・リウマチ膠原病の越智小枝氏の解説文です。
長くなりますが引用させていただきます。
.....実際の現場での対処についてあまり書かれていないこと、
より、多少の私見を交えて書かせていただきます。被災地にいらっしゃる膠原病患者さんで心配しなくてはいけない点は以下の3点で、
この順に緊急性が高くなります。1.ステロイド離脱症状:ステロイドは飲み止めない。
2.日和見感染症:病院へかかれない時には、免疫抑制剤と生物学的製剤は中止を。
3.内服出来ないことによる膠原病の再燃:肺・腎・脳の合併症の方は転院も考慮。以下、詳しく述べさせていただきます。
1.ステロイド離脱症状
患者さんの注意点:
・ステロイド剤(プレドニン、リンデロン、メドロールなど)の内服は絶対にやめな
いこと。離脱症状が起こり、急激に下痢・脱水・高熱・低血糖が起こります。
・どうしてもステロイドが手に入らない状況にある方の場合⇒半分量、あるいは1日
おきにして飲みつないでいただくしかないかもしれません。医師の注意点:
・膠原病の患者さんに上記の症状を認めた場合には、必ず普段のステロイドの内服の
有無、ここ最近きちんと飲めていたかどうかを聞いて下さい。感染と思って抗生剤治
療をしている間にどんどん悪くなる方もいらっしゃいます。・離脱を疑った場合には
ハイドロコートン100mgのi.v.、その後補充療法を始めて下さい。
・点滴のステロイドで補充する場合には1.2倍量を1日1回投与すれば同等の力価にな
ります。(5mg内服であれば6mg点滴)2.日和見感染症
患者さんの注意点:
・しばらく医療機関を受けられない可能性の高い患者さんは、免疫抑制剤(プログラ
フ・リウマトレックス・メトレート・アラバ・エンドキサン)の内服や生物学的製剤
(ヒュミラ・エンブレル)の自己注射は中止しておいて下さい。お薬の効果は短くて
も2週間以上続きますので、再燃より感染の方が危険です。
・ステロイドや免疫抑制剤を内服されている患者さんは、免疫力が落ちているため熱
や痰が出にくい状態です。また、日和見感染であるニューモシスチス肺炎やウイルス
性肺炎は元々痰が出にくく、空咳のみのこともあります。
・ステロイド・免疫抑制剤・生物製剤(レミケード・エンブレル・ヒュミラ・アクテ
ムラ)を使用している患者さんで空咳が続く場合には遠慮せず医療機関を受診されて
下さい。医師の注意点:
・特に避難所など人込みの中、かつ入浴の出来ない状態では、膠原病患者さんは易感
染状態にあります。
・関節リウマチの患者さんが1か所だけの関節を痛がって高熱が出ているときには、
化膿性関節炎も疑って下さい。リウマチよりこちらの方が命取りとなります。
・また、膠原病患者さんの咳を見たら、まずSpO2と血圧を測って下さい。熱や聴診以
上の指標になります。
・特にMTX・生物学的製剤ではニューモシスチス肺炎の危険があります。分からない
時にはバクタで加療も考慮ください。
・生物学的製剤は他にも結核感染(50%が肺外結核)の危険があります。
・資材の乏しい所では難しいかもしれませんが、SpO2 、血圧のいずれかが低い咳の
患者には上記を疑い検査・治療をお願いします。
・その他のリウマチ薬・免疫抑制剤:やめてすぐに再燃するわけではないので、中止
は可です。
・生物学的製剤の効果も、数週間続くので同様です。3.膠原病の再燃
関節リウマチの関節症状だけであれば免疫抑制剤は中止が好ましいですが、臓器病変
を伴う膠原病、特に間質性肺炎、腎炎、漿膜炎、血管炎に関しては再燃自体も危険な
状態です。薬・検査が満足に届かない地域でこのような疾患をお持ちの患者さんに関
しましては、搬送もご考慮下さい。ご不明な点などございましたら以下までご連絡いただければ幸いです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
越智小枝 Sae Ochi
東京都立墨東病院 リウマチ膠原病科Tel:03-3633-6151
→4月1日付で東京医科歯科大学膠原病・リウマチ内科Tel:03-38113-6111
.....